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・右肩上がりの終えん


 周知の通り、時代が作り出す好景気はもうしばらく来ないだろう。政府が発表す
るような景気回復はあっても、庶民が実感できるような本当の景気回復は、100年
ぐらいは来ないと感じる。なぜなら、いろいろな社会構造が変わってしまったから
だ。

 例えば、人口構造が変わったのが大きい。これはピラミッドがひっくり返ったよ
うなものだ。

 旺盛な消費意欲を持った若い年齢層が激減し、物は売れなくなった。それに合わ
せて企業も縮小し、人件費を削減している。

 また、グローバル社会になり、企業は賃金の安い国の労働者を使用できるように
なった。日本の若者を雇わずに、もっと賃金の安い国の人間を雇用し始めている。

 恐ろしいことに製造業だけではなく、経理などホワイトカラーの仕事まで中国に
流れている(大連などの日本語教育は相当盛ん)。今後はこの傾向にも拍車がかか
っていくだろう。

 物が勝手に売れた時代で、今のようなグローバル社会でもなかったかつての日本。
企業が多くの高校を直接訪れて、どうかうちの会社で正社員として働いてくれなど
と足を運んでいた状況は、現在の若者には想像し難いだろう(私も氷河期世代の人
間なので、まったく知らない世界ではある)。

 現在の若者、これからの若者は、もう普通に生きているだけでは正社員として雇っ
てはもらえないかもしれない。非常に酷な話だ。最近のデータ(2008年11月)では、
非正規雇用の割合が40%程度と発表された。

 若者以前の世代の人々は、普通の人が普通に正社員として仕事を手にし、将来へ
の展望を普通に明るく描けていたのに。だが、この「普通」はもう、普通ではなく
なった。

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