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アメリカンドリームなんてもはや存在しない
−苦悩する米国の若者

2012/1/14

「私は親から、アメリカンドリームを刷り込まれて育ったの。一生懸命勉強して、働
いて、頑張ればいい人生が送れると教えられたわ。でも、全然違うじゃない」。

『スティーブ・ジョブズの子どもたち』という番組に登場する、スタンフォード大学
のある卒業生が語った。

 当番組では、2005年にスタンフォード大学で行われたスティーブ・ジョブズのス
ピーチを聞いていた、スタンフォード大学の卒業生に焦点を当てている。

 スティーブ・ジョブズのスピーチを励みに、不況下で奮闘するスタンフォード大学
の卒業生を何人か特集している。

 スタンフォード大学を卒業後、投資銀行に就職し、卒業後すぐに年収1000万円超を
達成するも、「一体自分は何をしているんだろう」、「これは本当に自分がしたい仕
事なのだろうか」などと悩み、仕事を辞めたり、転職をしたりする若者もいる。

 もちろん、一部の優秀な若者は起業をするなどして、自分の価値観と社会的成功を
両立させる力量のある人もいるだろうが、それは一部でしかないだろう。

 また番組では、会計士でありながら仕事がなく、自分の名前等を書き込んだボード
(厚紙)を体からぶら下げながら、街中で「会計士の仕事はありませんか?」などと、
自分を売り込む若者を紹介。専門職でさえも、就職の厳しさを感じさせるエピソードだ。

 昨年ウォールストリートでデモが発生したが、スタンフォード大学の学生グルー
プも参加していたようである。

 当番組で取り上げられた若者は、実はまだいい人生を歩んでいる方なのだろう。だ
からこそテレビ出演にも応じたはずだ。おそらく、スタンフォード大学といえども、
卒業生の中には苦しんでいる人が大勢いることがうかがえた。

 スタンフォード大学卒という学歴を隠して、レストランでバイトを始めた女性も取
り上げられていた。レストランなどでは、高学歴は嫌われるらしい。

 ウォール街デモのある参加者は、「アメリカンドリームなんて存在しない。信じて
る奴は寝ぼけてんのよ」と言った。

 ジョブズのスピーチから3年後にリーマン・ショックが発生し、米国での従来の価値
観、生き方が、大きく変わろうとしているのかもしれない。

 上記は米国の話ではあるが、ほぼ現在の日本にも当てはまると感じる。

 もはや従来の価値観では充実した人生を歩むのは非常に難しい。それを象徴してい
るのが、「一生懸命勉強して、働いて、頑張ればいい人生が送れると教えられたわ。
でも、全然違うじゃない」というスタンフォード大学の卒業生の言葉。

 今後はジョブズが言うとおりに、自分の好きなことを見つけて、自分の今までやっ
てきたことを信じて(いつか何らかの形で生かされるはずだと)、そして、自分の価
値観を確立して(自分はどう生きたいのか)、後は日々努力するだけだろう。

 努力は必ず実るというのは幻想になりつつあるが、何もしないで人生を充実させる
ことは不可能。

 少なくても自分の納得いくような人生を送りたいものだ。

 納得できない仕事を我慢して、いつかその会社が倒産し、もし市場価値のあるよう
なスキルが身に付いていなかったとしたら…。

 人生後半で迷走し始める人生だけは避けたい。

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