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TPP参加は既定路線か
…米国の野望と、黒船なしには変われない
日本の強制的大改革

2011/11/9

 今日中にでも、民主党の野田首相がTPP参加への表明をしそうな勢いだ。

 おそらく、どれだけ反対の声をあげようが、これは既定路線なのだろうと思ってし
まう。日本が米国にNOと言えた記憶もない。

 政治的に見ても、米国は十分に戦略的にタイミングを測ってきたと言える。

 昨年の尖閣諸島中国漁船衝突事件もあり、また、中国の海洋進出も激しくなって
いる現在、「日本は米国が必要だろう?」と、米国は日本の政治的現状を読んでい
る感じもある。

 また、タイミングがいいことに、オリンパスの巨額な不正買収による損失隠しも取
り沙汰されている。

 日本の会計は不透明で、日本企業は国際基準にのっとってビジネスをやらなければ
ならないなどと、米国の投資会社(大株主)がNHKのニュースでコメントしていた。

 まるで、TPPで日本の不透明な村ビジネスを、米国が手伝って改革してやるというよ
うなニュアンスまで、勝手に感じ取ってしまった。

 さて、多くの人が感じているように、日本はTPPに参加することで、大ダメージを受
けるのは間違いない。

 農業崩壊や医療(国民皆保険制度など)も崩壊の可能性があり、非常に危険な臭が
するのは確かである。

 遺伝子組み換えの食品を食べざるを得なくなるのかもしれない。

 大企業はより海外に出て行きやすくなり、日本国内の失業率は上昇する。

 日本にとってネガティブな要素は莫大にあるのだが、どっちみちTPPには米国によっ
て強制参加させられてしまうのだろうから、少しはメリット?も含めて考えてみたい。

 今回のTPP。考えれば考えるほど、米国らしい非常に戦略的で、超野心的な目的が見
えてくる。王手飛車取りどころではなく、とても太刀打ちなどできないような、強力な作
戦と魂胆が見え隠れしてしまうのである。

 TPPに日本が参加すれば、おそらく、天下りはなくなる方向に進む可能性が高い。な
ぜなら、公営企業の改革が強制的に促進されるであろうと予測される。

 TPPでは、民間企業では利用できない政府の補助金による優越性を確実に排除する、
というものがあるらしい(ロイター通信の11月7日付の記事を参照):Part of the initiative
would be strong language that ensures state-owned enterprises (SOEs) do not benefit
from government subsidies not available to privately owned firms.

 つまり、公営企業が民営化されるようなことになる可能性がある。電力、ガス、水
道なんかも危ないだろう。

 また、この考えに基づくと、出版業界や新聞(再販制度の消滅)、マスコミの保護なん
かも違反になるだろうから、今のような既得権益層の崩壊につながる可能性は大きい。

 また、NHKなんかももちろん、今の受信料強制徴収による一方的な契約手法は、TPP
によって終わりを告げるだろう(不正な競争、政府の出資など)。

 さらに、この公平な競争という流れで、公務員のリストラも進む可能性が大である。
税収が激減すれば、それも公務員のリストラが避けられなくなるだろう。つまり、公務員
のリストラは加速すると予測される。

 このような改革が進むのは、昨今既得権益層に強く不満を持っている民間人にとっ
て、気持ちが少しは晴れるかもしれない。ただし、国益につながるというわけではないか
もしれないが。

 日本の既得権益層の所得の一部、あるいは大部分が、米国に移転されると考えても
いいのかもしれない。だから、日本の国益の観点から考えると痛い。ただし、国民の感情
面から考えると、まんざら悪くもないと思う日本人(特に若者層)に、多い可能性もある
(やっと公平になる、などと)。

 米国は、このように分断されている(既得権益層と純粋な民間層)日本人の心を巧
みに利用し、既得権益層の改革を一気に進めていくと考えることもできる。

 少し考え過ぎかもしれないが、実は日本政府は、喜んでTPPに参加したいのではない
か。

 残念ながら、自ら改革をする行動力はないので、黒船の力を利用して、どうしても
切れない既得権益層のチェーンを破壊したいという気持ちがあるのではないか。

 いかにも日本人らしいが、情けや思いやり、和をもって貴しとなす(この場合、悪しき
平等)などという感情論があるので、一度強固に出来上がってしまった天下りや公務
員改革、既得権益層改革などは、自らの手でできない民族なのであろう。しかし、これを
いつまでも放って置くことはできない。

 だから、反対のふりや悩んだふりをしている一方で、実は(非常に情けない話だが)、
アメリカ様、何卒一つよろしくお願いします、などと日本政府は考えているのではないか。

 このSOEに関する構想が、日本メディアではそれほど語られていないところを見ると、
日本政府は、心の中でそのように考えていても不思議ではないと思ってしまう。

 もしこのSOEに関する構想を説明したら、公務員や天下り、既得権益層から一斉に反
乱が起きてしまい、TPP参加がスムーズにいかなくなる恐れがあるだろう。

 正直、農業関係者の反対デモや、一般市民レベルのTPP反対デモなんかは、気にもし
ていないだろう(半分見下している感じ)。

 だが、役人連中や既得権益層からの強力な反対が起きると、さすがに政府としても困
るはずだ。だから、本当に肝心な部分は言わないようにしている可能性がある。

 このように、もし日本がTPPに参加すれば、独法改革、天下りの廃止、公営企業の改
革、公務員改革、マスコミ改革(NHKの受信料強制徴収廃止や新聞の再販制度廃止など
も)、既得権益層改革が行われる可能性は大きい。

 これは国民感情から言えば、TPP参加のメリットと言えるかもしれない。ただし、国益
にも寄与するとは言い難い(その分の利益が、外国、主に米国に流れてゆく可能性が
高い)。

 さて、今回のTPPでは、米国は中国を排除している。このSOE構想は(企業から政府
の力を排除するようなもの)、日本の市場をオープンにするだけではなく、中国市場の開
放も視野に入れていることが分かる。

 中国ではおよそ50%が国営企業だと言われているようだ(リンク先記事参照)。つ
まり、中国は絶対に参加できない。

 一見すると、米国は中国をTPPから排除しているようだが、真実はその逆だろう。つ
まり、将来、中国市場への大々的な進出を狙っているはず。

 その第一歩として、日本をよりオープンに改革する。しかも、天下りや既得権益層
に怒りを覚えている日本国民の民間人から賞賛されるような方法で。

 そして、環太平洋圏でブロック経済を構築し、中国をじわじわと追い込む。そして
中国が弱ってから、一気に中国市場を開放させるという作戦ではないか。

 政治的にも、TPPのネットワークで中国の海洋進出を阻み、経済的にも追い込む。そし
て、日本および環太平洋経済圏から米国へ大規模な所得移転を行う。

 そして、米国の経済を回復させ、政治的にも再び超大国の位置へ戻ろうとしている
のではないか。

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