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ウォール街のデモが意味するもの
…日本もアメリカも結局は同じ?

2011/10/18

 ウォール街のデモが、世界中に広がりを見せている。

 この主な原因を一言で言うと、「不公平に対する戦い」だろう。

 2007年のサブプライムローン問題の発端から、リーマンショックが起こり、ウォール
街の金融機関に米国民の税金がおよそ70兆円投入されることになった。

 銀行等、金融機関の人間は、普段は世間離れした高給を貪っていたにも関わらず、危
機が訪れたら倒産するどころか、血税であっさりと救済。

 これでは、デモが起きない方がおかしい。一般国民の常識からあまりにも乖離してい
る。

 アメリカでは、CEOなど企業幹部の待遇はすさまじく高い。日本企業の幹部が手にす
るよりも何倍も高い給料を手にしている場合が多い。

 資本主義先進国アメリカならではなのか、国民も成功に対しては賞賛を送る。成功者
が大金を手にするのは当然と。

 だが、この常識が一変してしまった。「あれ、リスクは取んないの?」と。

 リスクを取って、実績を上げた上での好待遇なら、誰でも納得が行くだろう。しかし、その
資本主義では譲れない絶対的なルールが、金融機関への膨大な税金投入による救済で、
ぶち壊されてしまった。

 いわゆる、資本主義では絶対にやってはいけない、モラルハザードだろう。

 だからこその、今回のデモである。

 米国民は、金融機関への膨大な税金による救済で、はっきりと認識してしまったのだ
ろう。「ああ、自分たちは金融機関のために働かされているのか」と。

 一方日本では、公務員バッシングや東電批判が勢いを増している。

 これも、理由はウォール街のデモと同じだと考える。

 どういうことかというと、例えば東電の場合、公務員以上の待遇を得ているわけであ
るが、国に支援を求めている(今日のニュースによると、まずは1兆円の要請らしい)。

 独占企業ならではの好待遇を得てきたわけであるが、今回の原発事故により、責任を
果たさなければいけなくなった。

 ところが、ウォール街の連中と同様に、潜在化していたリスクが顕在化してから、そ
の当然負うべきリスクと責任を、日本国民の血税でカバーしようとしている。

 そのため、米国民がウォール街の金融機関に怒っているのと同様に、日本国民が東電
に怒りを覚えるのは当然である。

 好待遇は、それなりの実績の対価として支払われるものである。また、相応のリスク
や責任が伴うのは自然の原理だろう。

 それなのに、危機が訪れたらおいしい部分だけを享受して、リスクや責任は放棄する
というのは、どのような神経をしているのだろうか。

 通常の大人としては、ありえない思考回路だ。

 米国は資本主義のモラルハザードゆえに、金融機関に怒りが向いているが、日本は社
会主義国のモラルハザードゆえに、公務員や東電(電力会社などの独占企業)に怒りが向
いている。

 その根底には、同じロジックが存在している。

 これからも世界中で、「不公平に対するデモ」は拡大してゆくだろう。

 おいしいものだけを食べていると、いつか病気になってしまうことにも気付かない病
人たちに、常識という薬を投与するために。

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