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どんなに辛くても、精一杯生きた方がいい理由
…なぜ人間は死を恐れるのか

2011/5/3

 もうどうせ死ぬからいいよ、などと言う人がいる。

 深い苦しみや悲しみに襲われた場合、絶望の淵に追い込まれた場合、そのよう
に思ってしまう気持ちは理解できる。

 だが、口に出して言った通りに本当に自殺してしまうような人は、ほとんどい
ない。

 どれだけ苦しくても、悲しくても、辛くても、命ある限り生きることを選択す
る人が大半である。

 なぜか。

 それは、本当は死を恐れているからだ。

 人間の本能として、死ぬことは一番怖いのである。

 誰からも教わったわけではないのに、子供から大人まで、国境を越えて、全人
類に共有される基本的な認識。

 では、死が怖いのは当たり前だが、なぜだろうか(さらに、当たり前なのもな
ぜか)。

 死ぬことにより、本当にあらゆるものから解放されて楽になれるのなら、多く
の人はなぜそれを選択しないのか。

 本当に死んで楽になれるのなら、もっと大勢の人があっさりと死を選択しても
良さそうなものだが。

 どれだけ辛い目にあっても、生きることを選択する人が普通である(世界共通
の認識として)。

 それほどまでに死が怖いのはなぜか。

 その答えは(勝手な直観であるが)、おそらく私たち人間が心の奥底で恐れて
いるのは、死そのものよりも、死後の世界ではないのか。

 輪廻転生(生まれ変わり)の考えを前提とした考え方であるが、私たちの記憶
の底には、死後の世界の恐怖が植え付けられているのではないだろうか。

 つまり、死んだからと言って、死後自動的に、より楽で快適な環境に行け
ることが、保証されていない
ことを知っているのではないか。

 むしろ、死ぬことにより、より過酷な環境に追い込まれることもあることを知っ
ているのかもしれない。

 そのようなことを、人間が本能的に知っているから、どれだけ辛い出来事があっ
ても、大半の人間は生きることを選択するのではないだろうか。

 さて、現在日本では、13年連続自殺者数が3万人を超えているという。

 東日本大震災の影響もあり、今後はより一層、生きていくのが苦しい社会にな
るのかもしれない。

 その恐ろしさを感じながらも、上記のように大半の人は、どれだけ辛い状況
にあっても、生きることを選択している
という事実を覚えておいておきたい。

 どのみち何も持たずに生まれてきて、何も持たずにこの世を去るわけである。

 いや、きっと、持って帰れるものを、できるだけたくさん持って帰るために、私た
ちは生まれてきたのだろう。

 何をどれだけ持って帰るのかは、私たちひとり一人違うのかも知れない。

 さすがにたくさん辛い思いまでして、持って帰れる宝物を探しに来たわけで
あるから、大量につかんで帰らないわけにはいかない。

 でも、宝物は相当貴重なものなのだろう。だって、目に見えない。

 あぁ、なるほど。目に見えないから、探すのに時間がかかる。

 それだったら、どうやら長生きした方が良さそうだ。

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